このページの要点
- PB商品では、製造した受注者に加え、名称・商標を表示した委託者も製造業者等に当たり得る(製造物責任法2条3項)。
- PL責任は原則として引渡しから10年残り得る(同法5条)。契約の保証期間とは別に保険で受け止める。
- 上限は「いかなる条項に基づくかを問わず」責任の総額にかけ、除外は故意・重過失・生命身体・秘密保持に絞る。
- 保険は、種類・保険金額・追加被保険者・保険料の分担の4点を決める。
結論:責任の条項は保険とセットで書き、賠償の上限は「いかなる条項に基づくかを問わず」まで届かせる
製造委託やOEMの契約で、金額の面で最も大きな影響を持つのが、製造物責任(PL)、リコール(回収)、損害賠償の上限の条項です。製品の欠陥で消費者がけがをしたり、表示の誤りで商品を回収したりすれば、損害は製品の代金をはるかに超えます。そのため、受注者は賠償の上限を置きたいと考え、委託者は回収費用を受注者に負わせたいと考えます。
アトラス行政書士法人が受注者側でレビューした製造委託基本契約では、賠償の上限の条項が入っていたのに、別の条の「全額を賠償・補償する」「費用を負担する」という定めに上限が届かず、空振りする構造になっていました。上限の条項は、置くだけでは足りず、契約のどの条項に基づく責任にも及ぶように書かなければ意味がありません。そして、責任を限定する条項は、受注者が保険でどこまで受け止められるかとセットで示したときに、委託者にも受け入れられやすくなります。報告書では、この考え方を「責任条項は保険とセットで出す」とまとめました。
このページでは、PB商品のPL責任の所在、上限条項が空振りする仕組みと直し方、上限と除外の書き方の比較、回収費用の分担、保険の付保を整理します。不良品の扱いと保証期間は契約不適合責任・品質保証、表示の誤りの責任の分担は表示責任と許認可のページで扱います。
PB商品のPL責任:製造した者と、表示をした者
製造物責任法(PL法)は、製造業者等が、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命・身体・財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う、と定めています(3条。損害がその製造物についてのみ生じたときは除かれます)。過失ではなく、製造物の「欠陥」(通常有すべき安全性を欠いていること。2条2項)を要件とする責任です。ここでいう「製造業者等」には、製造物を業として製造・加工・輸入した者(2条3項1号)のほか、自ら製造業者として製造物に氏名・商号・商標などを表示した者や、製造業者と誤認させるような表示をした者(同項2号)、製造・販売の形態などから実質的な製造業者と認められる表示をした者(同項3号)が含まれます。
PB商品の製造委託基本契約では、受注者が製造者としてPL責任を負うことが定められていました。事務所の報告書では、PB商品は委託者の名称や商標を付けて販売されるので、委託者も表示による「製造業者等」に当たり得ることを指摘し、PL責任の条と、損害の負担を寄与度に応じて按分する条との優先関係を明記するよう提案しました。被害者に対しては製造者と委託者の双方が責任を負い得る以上、当事者の間で最終的にどう負担するかを契約で決めておく必要があるからです。
PL法上の損害賠償の請求権は、被害者が損害と賠償義務者を知った時から3年(人の生命・身体の侵害は5年)、又は製造業者等が製造物を引き渡した時から10年で時効により消滅します(5条1項・2項)。身体に蓄積して健康を害する物質による損害や、一定の潜伏期間の後に症状が現れる損害では、この10年は損害が生じた時から数えます(同条3項)。契約上の保証期間が1年でも、PL責任は原則として引渡しから10年残り得るということです。報告書では、この長い期間の責任を契約の文言だけで受け止めることはできないので、保険で受け止める設計にすべきだと説明しました。
なお、契約の中で「仕様どおりに作った物の不良は負わない」と定めても、それは当事者の間の負担の決め方であって、被害者に対するPL法上の責任を消すものではありません。PL法の免責事由は、引渡しの時の科学・技術の知見では欠陥を認識できなかったこと、又は部品・原材料として使われた場合に、その欠陥が専ら他の製造物の製造業者の設計に関する指示に従ったことで生じ、かつ過失がないこと、に限られています(4条)。委託者の指示に従ったことの扱いは、まず当事者の間の求償の条項で決めることになります。
PB商品の事故が起きたときの責任の流れ
- 事故の発生製品の欠陥で消費者の生命・身体・財産に損害
- 被害者からの請求製造した受注者も、表示をした委託者も「製造業者等」として請求を受け得るPL法3条
- 当事者間の求償契約の寄与度按分の条とPL条の優先関係に従って最終負担を決める契約で決める
- 保険のてん補生産物賠償責任保険・回収費用の保険で受け止める保険
- 期間原則として引渡しから10年、責任が残り得るPL法5条
上限条項が空振りする仕組みと、その直し方
PB商品の原案には、先行して取引していた他社が入れた修正で、賠償の上限の条項が加えられていました。上限は当該個別契約の製造委託料の総額とし、逸失利益・間接損害・特別損害は責任を負わない、ただし故意・重過失の場合は除く、という内容です。事務所の評価は、方向性は完全に正しいが、三つの欠陥がある、というものでした。
第一に、この修正では損害賠償の条の第1項本文が全文削除されていました。そのため、当事者双方が損害賠償を請求できるという根拠が消え、その下に並んでいた各号(納期遅延や不良について率で定めた違約金など)が宙に浮き、第2項・第3項が参照する先も消えていました。第二に、上限が及ぶ範囲が足りませんでした。知的財産の条の「全額を賠償・補償する」、回収の条の「費用を負担・補償する」、仕様の条の「責任を負担する」、不適合の条の「逸失利益を含む」、費用を加算する条には、上限が届きません。第三に、上限額が1回の発注額で、委託者が抵抗しやすい水準でした。
修正案では、第1項本文を復元したうえで、上限を第4項として新設し、「いかなる条項に基づくかを問わず」として対象の条を列挙し、責任の総額に上限をかけました。費用の加算も上限に含めます。上限の除外は、故意・重過失、第三者の生命・身体の侵害、秘密保持義務の違反、の三つとしました。秘密保持の違反を除外に入れたのは、委託者が必ず指摘する論点を先に差し出すことで、上限そのものを通しやすくするためです。上限額は1回の発注額のほか、第二案として直近12か月の製造委託料の総額を示しました。各号の額を損害賠償額の予定(民法420条。当事者が債務不履行の賠償額をあらかじめ決めておくこと)とする案も、選択肢として残しています。
報告書では、故意・重過失を上限から除くことについて、宿泊約款の責任制限の定めは宿泊業者に故意・重過失がある場合には及ばないとした判例(最判平成15年2月28日)を示しました。故意・重過失の場合に上限が効かないのは、書いても書かなくても同じ結論になり得るのだから、除外を明記しても受注者が失うものは少なく、上限の条項を委託者に受け入れてもらいやすくなる、という説明です。
事務所の改訂例 賠償の上限の条項を届かせる
損害賠償の根拠
理由請求の根拠と各号のつながりを回復し、第2項・第3項の参照先を戻します。
上限の及ぶ範囲
理由別の条の「全額賠償」「費用負担」に上限が届かない空振りを防ぎます。
上限の除外
理由委託者が必ず求める除外を先に入れ、上限そのものを受け入れてもらいやすくします。
上限額
理由1回の発注額では低すぎると見られる場合の代わりの案を用意します。
条文例 第○条(損害賠償の上限)
- 第○条(知的財産権)、第○条(製品の回収)、第○条(仕様)、第○条(契約不適合責任)その他いかなる条項に基づくかを問わず、本契約及び個別契約に関して乙が甲に対して負う損害賠償、補償及び費用負担の責任の総額は、当該損害の原因となった個別契約の製造委託料の総額(又は損害の原因が生じた日の前12か月間に甲が乙に支払った製造委託料の総額)を上限とする。
- 乙は、逸失利益、間接損害及び特別損害については、その予見の有無にかかわらず責任を負わない。
- 前二項の規定は、乙の故意若しくは重大な過失による場合、第三者の生命若しくは身体を侵害した場合又は乙が秘密保持義務に違反した場合には、適用しない。
対象の条番号は実際の契約に合わせて列挙します。列挙と「その他いかなる条項に基づくかを問わず」を併用するのは、条番号の変更で漏れが生じないようにするためです。
上限と除外の書き方:事務所の書類の比較
上限の水準と除外の範囲は、立場によって大きく異なります。受託醸造の契約(受託者側)の修正版3では、損害賠償は通常かつ直接の損害に限り、逸失利益等は故意・重過失の場合を除き責任を負わず、受託者の上限は当該製造ロットの代金相当額としました。そのうえで、受託者の責めに帰すべき製造物責任による人身事故、重大な食品事故、法令違反の損害には上限を適用しないが、その場合でも受託者の賠償責任の総額は付保した保険でてん補される金額を上限とし、故意・重過失の場合はその上限も適用しない、という二段の設計を加えました。重大な事故で上限を外すことを受け入れる代わりに、保険で受け止められる範囲に責任を収める考え方です。
委託者側のデザイン商品の製造委託契約では、上限を支払済みの対価の総額としつつ、知的財産、秘密保持、人身、リコールに関するものを上限から除外し、修正版2では無断の変更、金型、競業、横流し、SNSへの掲載も除外に加えました。工業用化学製品のOEM(ブランド側)では、上限を当該契約年度の支払総額とし、故意・重過失と人的被害を伴う重大な事故を除外しています。海外製設備の売主側の契約書では、上限を受領済みの代金の20%とし、間接損害などの免責を9号にわたって列挙し、「予見し又は予見し得たか否かを問わず」と書き添えました。
賠償の上限と除外(事務所の書類にある例)
| 書類(立場) | 上限 | 上限の除外・特徴 |
|---|---|---|
| PB商品の製造委託(受注者側の修正案) | 当該個別契約の製造委託料の総額(第二案:直近12か月の総額) | 故意・重過失、第三者の生命・身体、秘密保持違反 |
| 受託醸造(受託者側) | 当該製造ロットの代金相当額 | 人身事故・重大な食品事故・法令違反は上限外。ただし保険のてん補額が上限(故意・重過失を除く) |
| デザイン商品の製造委託(委託者側) | 支払済みの対価の総額 | 知財・秘密保持・人身・リコール、無断変更・金型・競業・横流し・SNS掲載 |
| 工業用化学製品のOEM(ブランド側) | 当該契約年度の支払総額 | 故意・重過失、人的被害を伴う重大な事故 |
| 焼菓子のOEM(製造者側) | 定めなし(直接・現実の損害に限る、弁護士費用を含む) | 間接・特別・逸失利益は故意・重過失以外免責(双方) |
| 海外製設備の売買(売主側) | 受領済み代金の20% | 間接損害等の免責を9号列挙 |
上限額の基準(1回の発注・1年・ロット・受領済み代金)と、除外の範囲の組合せで、実際に守られる範囲が決まります。
リコール・回収費用・品質事故の対応を、原因と手順で決める
リコール(製品の回収)にかかる費用は、回収の物流、人件費、廃棄、原因の調査、代替品、行政への対応、消費者への告知など、多岐にわたります。委託者側のデザイン商品の製造委託契約では、これらのリコール等の費用は受託者がすべて負担するとしました。委託者の立場からは自然な書き方ですが、受注者側から見れば、上限の条項がこの費用負担に届くかどうかが決定的な意味を持ちます。PB商品の案件で、回収の条の「費用負担・補償」に上限が届いていなかったことを問題にしたのは、このためです。PB商品の案件では、回収の費用の最終的な負担は寄与度で按分する条に従うよう修正を求めました。委託者の保管や販売の方法、表示の決定に原因がある場合まで、受注者が負担することにならないようにするためです。
受託醸造の契約では、品質事故が起きた場合は双方が直ちに協議し、自主回収、行政機関への届出、報道対応その他必要な措置を協力して実施すること、回収の費用は原因と責任の所在に応じて委託者又は受託者が負担することを定めました。食品では、事故の初動の遅れがそのまま被害の拡大につながるため、費用の負担を決める前に、誰が何をするかの手順を先に書いておきます。
化粧品の双方向型の仕入・販売契約では、第三者からのクレームについて、原因をつくった当事者が対応を主導し、和解金や弁護士費用などを全面的に負担し、原因が分からない場合は協議する、としました。食品の委託販売の契約では、品質・表示・賞味期限などの不適合に起因するクレームの費用は製造者が、販売の方法・保管・広告の表示に起因するものは販売者が負担する、と原因ごとに分けています。原因の切り分け方を契約で決めておくと、事故の後の負担の協議が短く済みます。
回収・事故対応の条項を、立場でどう書くか
受注者・製造者側
- 回収費用の最終負担は寄与度で按分し、上限の条項が及ぶようにする。
- 表示の決定・保管・販売方法に原因がある部分は委託者の負担とする。
- 人身・重大事故で上限を外すなら、保険のてん補額を上限にする。
- 事故時の初動(協議・届出・告知)の手順を先に決める。
委託者・ブランド側
- 回収・物流・人件・廃棄・調査・代替品・行政対応の費用を列挙する。
- 知財・秘密保持・人身・リコールを上限の除外に入れる。
- クレーム対応の主導者を原因で決め、原因不明の場合の協議を置く。
- 受注者に保険の加入・維持と証明書の提出を義務付ける。
保険:PL保険と生産物回収費用の保険で、責任を受け止める
PB商品の案件の報告書では、保険について決めておくべき項目を4点に整理しました。保険の種類(生産物賠償責任保険と、生産物回収費用の保険)、保険金額、委託者を追加被保険者にするかどうか、保険料の分担、です。これらは契約書の本文で細かく決めなくても、議事録などで確定させておけば機能します。依頼者への確認事項としては、現在のPL保険がPB受託品を補償の対象にしているか、委託者を追加被保険者にできるか、回収費用の保険が必要か、を挙げました。
受託醸造の契約の修正版3では、受託者は製造物責任保険その他これに準ずる保険(受託者が合理的に付保できる範囲のものに限る)に加入して維持し、委託者から求めがあれば加入を証する書類を示す、としました。「合理的に付保できる範囲」と限定したのは、小規模な醸造所に過大な保険を求める形にしないためです。デザイン商品の製造委託契約(委託者側)では、PL保険の補償の範囲(対人・対物)、1事故あたりと期間通算の補償額、委託者を追加被保険者とする努力義務、締結時と更新時の証明書の提出、失効したときの通知、違反したときの解除まで定めています。
責任の条項と保険の条項をセットで示すと、委託者の側も、受注者に上限を認める代わりに保険で被害者への賠償が確保される、という全体像で判断できます。上限だけを求めると、委託者には責任逃れに見えますが、保険の内容とあわせて示せば、リスクの受け止め方の提案になります。
条文例 第○条(保険)
- 乙は、本契約の有効期間中、本製品に関する生産物賠償責任保険その他これに準ずる保険(乙が合理的に付保することができる範囲のものに限る。)に加入し、その効力を維持する。
- 前項の保険の種類、保険金額、甲を追加被保険者とするか否か及び保険料の負担は、甲乙が別途書面により定める。
- 乙は、甲から求めがあったときは、前項の保険に加入していることを証する書類を甲に提示する。保険が失効し、又は補償の内容が変更されたときは、乙は速やかに甲に通知する。
ヒヤリングで確かめること
ヒヤリング控製造物責任・回収・賠償の上限
- 製品に委託者の名称・商標が表示されますか。製造者の表示はありますか。表示による製造業者等に当たるかと、当事者間の求償の条項の必要性を判断します。
- PL保険に加入していますか。受託品は補償の対象ですか。上限の設計と、保険のてん補額を上限にする条項の可否を決めます。
- 回収費用の保険(リコール保険)は検討していますか。回収費用の負担と上限の関係を整理します。
- 契約書の中に「全額を賠償」「費用を負担」と書いた条はいくつありますか。上限が届かない条を洗い出し、列挙に加えます。
- 1回の発注額と、年間の取引額はどのくらいですか。上限額の基準(1回・1年・ロット)を選びます。
- 食品・化粧品など、行政への届出や自主回収が想定される商品ですか。事故時の初動の手順と協力義務を条文にします。
起きがちなこと
事故の原因が表示の誤りや許認可の問題にあるときは、責任の分担の考え方が変わります。表示責任と許認可、輸入品の場合に輸入者が製造業者等に当たる点は輸入品・海外製造品・海外向け販売のページもご覧ください。
よくあるご質問
PB商品の事故で、販売した小売とメーカーのどちらがPL責任を負いますか?
製造したメーカーは製造業者としてPL責任を負います(製造物責任法2条3項1号・3条)。PB商品に小売の名称や商標が表示されている場合、小売も、製造業者と誤認させる表示をした者や実質的な製造業者と認められる表示をした者として、製造業者等に当たり得ます(同項2号・3号)。当事者の間の最終的な負担は、契約の求償・寄与度按分の条で決めておきます。
賠償上限を入れたのに、上限が効かないことがあるのはなぜですか?
上限が損害賠償の条の中だけに書かれ、知的財産・回収・仕様などの別の条の「全額賠償」「費用負担」に届いていないことがあるからです。対象の条を列挙し、いかなる条項に基づくかを問わず責任の総額に上限をかける書き方にします。故意・重過失の場合に上限が及ばないことは、判例(最判平成15年2月28日)の考え方からも想定しておきます。
PL保険と回収費用保険(リコール保険)は誰が入るべきですか?
製造者として責任を負う受注者が加入するのが基本ですが、保険の種類・保険金額・委託者を追加被保険者にするか・保険料の分担を当事者で決めておく必要があります。受注者の保険が受託品を補償の対象にしているかも確認します。契約では、合理的に付保できる範囲の保険への加入と、証明書の提示を定める例があります。
人身事故の場合も、賠償の上限を適用できますか?
第三者の生命・身体の侵害は上限から除外するのが一般的な書き方です。受託者側の契約で、人身事故・重大な食品事故には上限を適用しないが、その場合でも付保した保険でてん補される金額を上限とする(故意・重過失を除く)、という二段の設計をした例があります。
製品を回収することになった場合、費用はどう分担しますか?
契約で原因ごとに決めておきます。委託者側では回収・物流・人件・廃棄・調査・代替品・行政対応の費用を受託者負担とする例があり、受注者側では回収費用の最終負担を寄与度で按分し、上限の条項を及ぼす修正例があります。品質・表示に起因するものは製造者、販売・保管・広告に起因するものは販売者と分けた例もあります。
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