このページの要点
- 海外製であり保証・責任の範囲が限定的であることを、契約の冒頭で双方が確認する。
- 内容を決めるのは承認した図面と仕様書だけとし、カタログ・動画・口頭説明は参考資料にとどめる。
- 保証はメーカーが認める範囲に揃え、部品供給は一定期間の手配の協力とその後の有償の別契約にする。
- 引渡条件はインコタームズで決め、輸出入の条が他の条に優先すると書く。
結論:輸入して売る売主は「販売者であって製造者ではない」立場を明記し、保証はメーカーの対応に揃える
海外のメーカーが製造した設備や製品を輸入して国内の買主に売る取引では、売主は自分で作っていない物について、買主から国内メーカー並みの品質と保証を期待されがちです。ところが売主にできるのは、メーカーに対応を求めることまでで、メーカーが製造を中止したり、部品の供給を止めたり、倒産したりすれば、売主の力では修理も部品の手配もできません。契約書に何も書かなければ、そのリスクは売主が買主に対して丸ごと負うことになります。
アトラス行政書士法人が売主側で作成した海外製設備の売買契約や輸入したユニット建物の売買契約では、まず契約の冒頭で「海外で製造される物であり、保証と責任の範囲は限定的である」ことを双方で確認し、そのうえで、内容を決める資料を図面と仕様書に限り、保証の対象を具体的に列挙し、メーカーの事情による部品供給の困難を責任の外に置く、という組み立てをとりました。海外で製造する商品を委託者として発注する側の契約書では、インコタームズによる引渡条件と、通関・書類の分担を一つの条にまとめています。
このページでは、輸入して売る売主の立場の確認、約束する範囲の決め方、保証と部品供給、不可抗力と関税、引渡条件と通関、海外で再販売する相手への卸売を、事務所の書類から整理します。所有権と危険の移転の基本は所有権の移転・危険負担・所有権留保、保証期間の比較は契約不適合責任・品質保証のページで扱います。
海外製であることと、保証の範囲が限定的であることを第1条で確認する
海外で製造される生産設備を国内の買主に売る売主側の契約書では、目的の条の第2項で、設備が海外の製造業者により製造される海外製の設備であることを相互に確認し、この契約に定める保証と責任の範囲が限定的なものであることを確認する、と定めました。第3項では、契約に明示する場合を除き、売主は設置工事・建築工事・電気工事・給排水工事・生産能力の保証・収益の保証その他の役務の提供の義務を負わない、としています。後の条で保証を限定しても、契約の冒頭でその前提を双方が確認していなければ、限定の条項が「買主に不意打ち」と受け取られかねないからです。
さらに「製造メーカーに関する特則」の条を置き、売主は設備の販売者であって製造者ではないこと、買主は海外で製造される設備であることを理解し、品質・仕上げの精度・外観・部品の供給体制・製造工程・品質管理体制などが日本国内のメーカー製の設備と同等であることを売主が保証するものではないと確認すること、を定めました。メーカーによる製造の中止、部品の供給の停止、輸出の規制、法令の改正、工場の閉鎖、倒産、事業の譲渡など、売主の合理的な支配の及ばない事由で部品の供給や修理・保証の対応が困難になった場合は、売主は責任を負わない、としています。メーカー・部品供給業者・運送業者などの第三者に起因する遅延や不具合も、売主に故意・重過失がある場合を除いて責任を負いません。
ただし、契約でこのように定めても、製造物責任法の扱いは別です。製造物責任法は、製造物を業として輸入した者も「製造業者」に含めています(2条3項1号)。輸入した設備や製品の欠陥で他人の生命・身体・財産に損害が生じれば、輸入した売主は被害者に対して製造物責任を負い得ます。契約の保証の限定は買主との間の取り決めであって、被害者に対する責任を消すものではないので、保険の手当ては別に検討します。PLの考え方は製造物責任・リコール・賠償の上限のページで扱っています。
条文例 第○条(目的及び確認事項)
- 本契約は、甲が乙に対し本設備を売り渡し、乙がこれを買い受けるにあたり、その製造、売買、輸送、納品、検収、試運転、保証、部品供給、危険負担、所有権の帰属その他の取引に関する甲乙間の権利義務を定めることを目的とする。
- 甲及び乙は、本設備が海外の製造業者により製造される海外製設備であることを相互に確認し、本契約に定める保証及び責任の範囲が限定的なものであることを確認する。
- 甲は、本契約に明示的に定める場合を除き、本設備の設置工事、建築工事、電気工事、給排水工事、生産能力の保証、収益の保証その他の役務の提供の義務を負わない。
約束する範囲:図面と仕様書だけが内容を決め、カタログや動画は参考資料にとどめる
輸入品の取引で争いになりやすいのは、買主が見た営業資料と、実際に届いた物との差です。海外製設備の売主側の契約書では、設備の仕様・寸法・構造・材質・性能その他の技術的な内容は、双方が最終的に承認した図面と仕様書によってのみ決まるとし、見積書・提案書・営業資料・カタログ・参考図面・動画・写真・サンプル・口頭の説明は、特段の定めがない限り参考資料にすぎず、契約の内容にならない、と定めました。図面・仕様書・技術資料の内容が食い違う場合は、図面、仕様書、技術資料の順に優先する、という順位も決めています。
買主が期待した経済的な成果についても、明示的に保証の外に置きました。設備が図面と仕様書に適合している限り、買主は生産能力・処理能力・稼働率・歩留まり・作業効率・省力化の効果・収益性などを理由に異議を述べられない、としています。試運転は図面と仕様書に基づいて基本的な機械の動作を確認するもので、操作説明は基本的な使い方の説明であって技術指導や継続的な教育を含まず、調整は試運転で確認された軽微なものに限る、と書きました。試運転や調整に売主が立ち会うと、性能まで保証したと受け取られやすいので、その意味を条文で限定しておくわけです。
代金に何が含まれるかも、輸入品では特に細かく書きます。この契約では、代金には設備の製造費・梱包費・輸出関連の費用・輸送費・契約に定める範囲の試運転の対応費を含み、設置工事・建築工事・電気工事・給排水工事・基礎工事・搬入据付・クレーンやフォークリフトの費用・養生・現地の調整・試運転の原材料や消耗品・従業員の教育・宿泊や交通の費用などは含まない、と列挙しました。売主は設置工事を請け負わず、据付・接続・配線などの現地の工事はすべて買主の責任と費用で行う、という条も独立させています。
代金に含むもの・含まないもの(海外製設備の売主側の例)
| 区分 | 項目 | 扱い |
|---|---|---|
| 含む | 製造費、梱包費、輸出関連費用、輸送費、契約で定める範囲の試運転対応費 | 売買代金に含む |
| 含まない(工事) | 設置工事、建築工事、電気工事、給排水工事、基礎工事、搬入据付 | 買主が自己の責任と費用で手配 |
| 含まない(機材・現地) | クレーン、フォークリフト、養生、現地調整 | 買主の負担 |
| 含まない(試運転・教育) | 試運転時の原材料・消耗品、従業員の教育、宿泊費・交通費 | 買主の負担 |
| 追加対応 | 買主の要請による仕様変更・数量変更・設計変更・追加製作・追加調整 | 別途協議のうえ買主が追加費用を負担 |
「その他本契約において売主が負担する旨を明示していない一切の費用」を含まない側に入れ、列挙の漏れを補っています。
保証と部品供給:メーカーの対応に揃え、期間と範囲を区切る
海外製設備の売主側の契約書では、保証を検収完了日から1年に限り、保証の対象を、承認図面との寸法の相違、納品時の外装の不良、海外のメーカーが保証の対象と認めた動作不良・製造上の欠陥、の三つに限りました。三つ目の「メーカーが認めた」という限定が、輸入品の保証の要点です。売主が買主に約束する範囲を、売主がメーカーから受けられる対応の範囲に揃えておけば、売主だけが責任を抱える隙間がなくなります。部品の供給は、検収後1年間は調達・供給の手配に協力するものとし、その後は有償で、1年ごとの別契約によるとしました。
輸入したユニット建物の売主側の契約では、修正版で「保証対応の協力」の条を新設しました。売主は輸入販売者として、契約の仕様どおりに納品する責任は負うが、受領した後の故障については、メーカーと協議して対応を試みるにとどまり、修理・交換・保証は確約しない(メーカーの対応内容に準じる)、としています。対応の期間は受領から1年とし、国内で調達が難しい部品は、製造国からの部品の調達の代行支援などを協議する、と書きました。金銭の補償・返品・解除の義務は負いません。売主にできることを「協力」として具体的に約束し、できないことを確約しない、という書き分けです。
事務所の改訂例 輸入品の保証を、メーカーの対応に揃える
受領後の故障の扱い
理由売主の力では左右できないメーカーの対応を、売主の約束から切り離します。
期間と部品
理由できる協力を具体的に書き、何もしない売主だと受け取られないようにします。
金銭の救済
理由メーカーの保証を超える救済を、輸入販売者が負わない形にします。
不可抗力・関税・為替:海外の事情による遅れと費用の変動
海外で製造する物は、国内の取引にはない事情で納期が遅れたり、費用が変わったりします。海外製設備の売主側の契約書では、不可抗力の事由として、天災や戦争などの一般的なものに加えて、関税の変更、為替の急激な変動、製造国の政治的・経済的な事情の変化、原材料の不足、半導体の不足まで列挙しました。納品の条でも、港湾のストライキ、輸送の規制、感染症の流行、通関上の問題などで納期が遅れた場合は売主が責任を負わないとし、製造工程・輸送事情・通関手続その他の合理的な理由で納品予定日を変える必要があるときは、売主が通知して納品日を変更できる、としました。
輸入したユニット建物の売主側の契約では、輸入の関税や付加価値税などが発生する場合は買主の負担とする、と定めました。海外製設備の契約では、代金の50%を契約後7日以内に、残額を海外の工場からの出荷予定日の前日までに支払い、入金を確認してから出荷するという前払いの条件にしています。受注生産で海外の工場に発注する物は、買主の都合で取り消されると転売が難しいので、前払いと所有権留保で売主の資金の負担と回収のリスクを抑える組み立てです。
輸入品の売買契約で確かめる項目
- 海外製であることと、保証・責任の範囲が限定的であることを冒頭で確認しているか。
- 内容を決める資料(図面・仕様書)と、参考資料にとどまるもの(カタログ・動画・口頭説明)を分けているか。
- 保証の対象を、メーカーが認める範囲に揃えているか。部品供給の期間と、その後の扱いはどうか。
- 不可抗力に、関税の変更・為替の急変・製造国の事情・原材料や部品の不足を含めているか。
- 関税・付加価値税・通関の費用を誰が負担するか。
- 代金に設置工事・据付・現地調整が含まれないことを明記しているか。
引渡条件・通関・輸出管理:インコタームズと本条の優先関係
海外の工場で製造することを想定したデザイン商品の製造委託契約(委託者側)の修正版では、輸出入の条を独立させました。引渡条件は、インコタームズ2020(国際商業会議所が定める貿易取引条件の解釈の規則の2020年版)に基づき、発注書又は個別契約で定めること(例として、FOB、CIF、DDPなど)、危険の移転時期と費用の負担はその条件に従うこと、輸出の通関は受託者、輸入の通関は委託者が行うこと、受託者はインボイス・パッキングリスト・原産地証明書などを作成して提供すること、を定めました。そして、この条と他の条項が矛盾するときはこの条が優先し、インコタームズの用語の解釈はインコタームズが優先する、としています。
この優先関係の定めが要点です。契約書の別の条で「危険は納品完了まで受託者が負う」と書いていても、個別契約でFOB(本船に積み込んだ時点で危険が移る条件)を選べば、危険の移転時期が食い違います。どちらが優先するかを書いておかないと、輸送中の事故の負担が決まりません。化粧品の双方向型の仕入・販売契約では、納品にかかる運送費・保険料・通関費用などの負担は個別に協議し、配送中の危険はインコタームズ・運送契約・別途の合意に従う、と定めています。
反対に、輸出入を想定しない国内の取引に、輸送費・保険料・関税・通関の費用を一方の負担とする書式の一文が残っていると、思わぬ費用負担の根拠になりかねません。書式を流用して契約書を作るときは、輸出入の条項が取引の実態に合っているかを確かめます。一方で、物を輸出しない取引でも手当てが必要な場面があります。工業用化学製品のOEMの契約では、輸出管理の対象となる技術などを提供する場合(いわゆるみなし輸出や再輸出を含む)に、提供する側が相手方に通知し、必要な許可を取得する、という定めを置いています。技術資料の提供が輸出管理の対象になり得る取引では、物の輸出がなくても、この点を契約で決めておく必要があります。
条文例 第○条(輸出入)
- 本製品の引渡条件は、インコタームズ2020に基づき、発注書又は個別契約において定める。危険の移転時期及び費用の負担は、当該引渡条件に従う。
- 輸出通関は乙が、輸入通関は甲が、それぞれ自己の責任において行う。乙は、インボイス、パッキングリスト、原産地証明書その他輸出入に必要な書類を作成し、甲に提供する。
- 本条の定めと本契約の他の条項の定めが矛盾するときは、本条の定めが優先する。インコタームズに定める用語の解釈については、インコタームズの定めによる。
危険の移転を定める他の条(納品・所有権の条)と、この条の優先関係を必ず一致させます。
海外で再販売する相手への卸売と、ヒヤリングで確かめること
国内の作り手が、海外で再販売する国内の法人に商品を卸す取引もあります。個人の作家が作った雑貨を、海外で販売する国内の法人に卸す売主側の売買契約では、販売地域を特定の国の国内市場に限り、販売チャネルを特定の実店舗とオンラインショップに限りました。第三者への転売・委託販売・仲介の許諾などの再販売は、売主の書面による同意を要するとしています。代金は請求書の日付から短い期限内に日本円で一括して振り込み、送金の費用は買主の負担です。海外での販売では、作り手が販売の場所と方法を把握できないと、ブランドの管理ができなくなるため、地域とチャネルを特定しています。
販売地域や販売方法を制限する条項は、内容と目的によっては独占禁止法上の問題(相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけた取引など)が生じ得ます。販売地が海外の場合は、販売地の国の競争法との関係も別に生じ得ます。制限を置くときは、ブランドの管理などの目的と、制限の範囲を説明できる形にしておきます。販売価格の指定の問題を含め、流通の制限の考え方は卸売・委託販売と流通の制限のページで扱います。
ヒヤリング控輸入品・海外製造・海外向け販売
- 製造しているのは海外のメーカーですか。メーカーとの間の保証の条件は分かりますか。買主への保証を、メーカーから受けられる対応の範囲に揃えます。
- 部品が手に入らなくなったときの手当て(代替品・製造国からの調達)は可能ですか。部品供給の期間と、その後の有償の別契約の扱いを決めます。
- 営業で使っているカタログ・動画・サンプルはありますか。参考資料にとどまることと、図面・仕様書の優先を明記します。
- 引渡条件(FOB・CIF・DDPなど)は決まっていますか。危険の移転と費用の負担、他の条との優先関係を決めます。
- 関税・付加価値税・通関の費用は誰が負担する予定ですか。費用の負担と、関税変更を不可抗力に含めるかを決めます。
- 相手方に技術資料を提供しますか。相手方は海外の拠点とつながっていますか。輸出管理(みなし輸出・再輸出)の通知と許可の取得の定めの要否を確認します。
起きがちなこと
輸入品の表示や、設置場所の法令適合を誰が確認するかは表示責任と許認可のページもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
海外メーカーの設備を輸入して販売する場合、売主はどこまで保証すべきですか?
売主がメーカーから受けられる対応の範囲に揃えるのが基本です。保証の期間を区切り、対象を承認図面との寸法の相違、納品時の外装の不良、メーカーが保証の対象と認めた欠陥などに限り、生産能力や収益性は保証しないと明記した例があります。契約の冒頭で、海外製であり保証の範囲が限定的であることを双方で確認しておきます。
インコタームズを契約書に書くときの注意点は何ですか?
引渡条件をインコタームズのどの条件(FOB・CIF・DDPなど)にするかを発注書や個別契約で決め、危険の移転と費用の負担をそれに従わせます。契約の別の条で危険の移転を定めている場合は食い違いが生じるので、輸出入の条が他の条項に優先し、用語の解釈はインコタームズによる、と優先関係を書いておきます。
部品が手に入らなくなった場合、売主は責任を負いますか?
契約に定めがなければ、買主から修理や部品の手配を求められ得ます。メーカーの製造中止・部品供給の停止・輸出規制・倒産など、売主の合理的な支配の及ばない事由による部品供給の困難は責任を負わないとし、部品の供給は一定期間の手配の協力にとどめ、その後は有償の別契約とする書き方があります。
輸入した商品の欠陥で事故が起きたら、輸入した売主も責任を負いますか?
製造物責任法は、製造物を業として輸入した者も製造業者に含めています(2条3項1号)。契約で買主への保証を限定しても、被害者に対する製造物責任は別に負い得ます。保険の手当てを含めて検討します。
海外で再販売する会社に卸すとき、販売地域を限定できますか?
販売地域や販売チャネルを特定し、再販売に書面の同意を要するとした例があります。ただし、販売地域や販売方法の制限は、内容と目的によっては独占禁止法上の問題が生じ得ますし、販売地の国の競争法との関係も生じ得ます。ブランドの管理などの目的と制限の範囲を説明できる形にしておきます。
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